無保険運行とは
自動車保険には、自賠責保険と任意保険の2つがありますが、無保険運行の「保険」とは、自賠責保険を指します。
任意保険は、文字通り任意ですので、加入義務はありません。
自賠責は略称で、正式名称は自動車損賠賠償責任保険と言い、またの名を強制保険と呼び、法律で加入を義務付けられています。
この自賠責保険に加入せずに車やバイクを運転すると、無保険運行という交通違反で取り締まりを受けます。
自動車損害賠償保障法では、以下のように定められています。
(責任保険又は責任共済の契約の締結強制)
第五条 自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。出典:自動車損害賠償保障法 第五条
条文を読んで見ると、自動車損賠賠償責任保険の他に、自動車損害賠償責任共済があります。
両者の違いは、販売元です。
自動車損賠賠償責任保険は保険会社が販売しているのですが、自動車損害賠償責任共済は農業協同組合、全労済、全労済再共済連、電通共済、全交通共済、全たばこ生協、森林労連、全水道共済が販売しています。
制度上はどちらも同じですので、どちらに加入しても問題ありません。
自賠責保険未加入の罰則
違反行為の種類 | 違反点数 | 罰則 |
無保険運行 | 6点 | 懲役1年以下又は罰金50万円以下 |
自賠責保険未加入で車両を運転した時の罰則は、上記の通りです。
違反点数は6点、罰則は懲役1年以下又は罰金50万円以下です。
違反点数6点は、行政処分前歴なしでも一発で免停になる点数です。
【参考】免停とは?違反点数と停止期間!前歴なしでも6点で停止処分
罰則も交通反則通告制度はなく、反則金を納付すれば刑事手続等へ移行しないということはありません。
懲役1年以下又は罰金50万円以下が科せられます。
また自賠責保険が未加入の状態になっている時は、車検が切れている可能性が高いです。
というのも、基本的には自賠責保険と車検の加入時期は同じだからです。
なぜなら、車検を通すためには、自賠責保険の加入が条件となっているからです。
ただ、自賠責保険未加入と車検切れ運転の両方の交通違反をした場合、観念的競合という1つの行為が2つ以上の罪名に触れる時、その最も重い刑により処罰されるという考え方により、無保険運行の罰則である懲役1年以下又は罰金50万円以下が科せられます。
違反点数も6点です。
ただ、これは観念的競合ではなく、道路交通法施行令に同時に2つ以上の種別の違反行為をすると、最も高い点数にすると書かれているからです。
つまり、無車検運行、無保険運行の両方の交通違反をした場合、より罰則が厳しい無保険運行の罰則が適用されるということです。
自賠責保険未加入で死亡事故を起こした場合
自賠責保険未加入で死亡事故を起こした場合、当然、賠償金はすべて自己負担です。
もしも1億2千万円などの高額な賠償命令が出た場合でも、すべてを自分で支払う必要があります。
任意保険に加入していれば、補償は受けられますが、自賠責保険の補償限度額を超えた金額のみです。
自賠責保険の補償限度額は3千万円ですので、もしも1億2千万円の賠償命令が出た場合、9千万円の補償は受けられますが、3千万円は自己負担です。
支払えない場合、国が代理で被害者へ補償しますが、その後、国が裁判を起こし、損害賠償責任者所有の自動車、土地や建物、給与などを差し押さえし、補償金額を回収します。
2018年(平成30年)の自賠責保険・共済の掛金
車両の種類 | 60ヶ月 | 48ヶ月 | 36ヶ月 | 24ヶ月 | 12ヶ月 |
自家用乗用自動車 | 35,950 | 25,830 | 15,520 | ||
軽自動車 (検査対象車) | 34,820 | 25,070 | 15,130 | ||
小型二輪自動車 (250cc 超) | 14,690 | 11,520 | 8,290 | ||
軽二輪自動車 (126 ~ 250cc) | 22,510 | 19,140 | 15,720 | 12,220 | 8,650 |
原動機付自転車 (125cc 以下) | 16,990 | 14,690 | 12,340 | 9,950 | 7,500 |
(単位:円)
上記が自賠責保険・共済の料金です。
各社一律同額で、離島や沖縄県以外、全国同一料金です。
沖縄県や離島は自賠責保険が安く設定されています。
その理由は、離島には鉄道がなく、沖縄県にもモノレールしか存在しておらず、交通手段は車に頼らざるを得ないからと自賠責保険の保険金の支払いが少ないからのようです。
自賠責の限度額
損害の範囲 | 支払限度額(被害者1名あたり) | |
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、 休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害に よる損害 | 逸失利益、慰謝料等 | ●神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい 傷害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 ●後遺障害の程度により 第 1 級:最高3,000万円 第14級:最高75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料 | 最高3,000万円 |
死亡に至るまでの 傷害による損害 | (傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円 |
出典:国土交通省『自賠責保険・自賠責共済のご案内』
自賠責の損害の範囲・支払限度額は上記の通りです。
これだけでは十分ではないですが、必要最低限の損害は自賠責で補償されます。
もしも自賠責保険に未加入の場合、これらの補償が受けられません。
特に被害者に後遺症が残ったり、死亡してしまった場合、多額の賠償命令が出ます。
その時に自賠責保険に未加入であると、大変なことになってしまうことがわかると思います。
自賠責の有効期限を知る方法
自賠責の有効期限を知るには、自賠責ステッカーか、車検ステッカーを見れば有効期限がわかるようになっています。
自賠責ステッカーは、250cc以下のバイク・原付に貼ってあり、250ccを超えるバイクや自動車には車検ステッカーが貼ってあると思います。
それらのステッカーが貼っていない場合、30万円以下の罰金(自賠責ステッカー)もしくは、50万円以下の罰金(車検ステッカー)が科せられますので、車体に貼ってあるはずです。
もしも貼っていない場合は、速やかに貼るようにしてください。
また、有効期限切れのステッカーを表示していた場合にも罰金がありますので、注意が必要です。
必ず張り替えるようにしてください。