制動距離とは
制動距離とは、運転者がブレーキを踏み、ブレーキが効き始めた後、車が停止するまでの距離のことです。
ここで注意してほしいのは、停止距離と制動距離は違うということです。
停止距離とは、空走距離と制動距離を足したものです。
空走距離とは、危険を察知してからブレーキを踏み、ブレーキが効き始めるまでに自動車が進む距離です。
計算式にすると、以下のようになります。
例えば、ぼーっとしていたり、誰かと話していたり、疲労が溜まっていたりすると空走距離が長くなる可能性が高いですし、地面が濡れていたり、タイヤがすり減っていたりすると制動距離が長くなる可能性があります。
そして、どちらかの距離が長くなると、必然的に停止距離も長くなってしまいます。
空走距離・制動距離・停止距離はどれくらい?
それでは、本題であるブレーキを踏んでから自動車が停止するまでの距離を見ていきましょう。
ただし、制動距離だけしっても仕方がないので、制動距離と共に空走距離、停止距離も見ていきましょう。
それでは、自動車は危険を察知してから、どれくらいの距離で停止できるかの計算式を出します。
空走距離の計算式は、反応時間(秒) × 制動前の車速(m/秒)
制動距離の計算式は、制動前の時速(Km/時)の2乗 ÷(254×摩擦係数)
停止距離の計算式は、空走距離+制動距離
ですので、自動車は危険を察知してから、どれくらいの距離で停止できるかは、運転者の反応スピードと自動車の速度、そして地面の状況やタイヤの性能によって決まるということがわかります。
反応時間は、通常人の平均は0.75秒とされており、それよりも早ければ空走距離は短くなり、遅ければ長くなります。
自動車の速度と地面の状況やタイヤの性能は、ケースバイケースとなるため、どれくらいの距離になるかはぱっと言うことはできません。
そこで状況を設定して、どれくらいの空走距離、制動距離、停止距離になるか見ていくことにしましょう。
アスファルトが乾燥している道路
反応時間(秒):0.75 摩擦係数:0.7
自動車の時速(km/h) | 空走距離(m) | 制動距離(m) | 停止距離(m) |
10 | 2.08 | 0.56 | 2.64 |
20 | 4.17 | 2.25 | 6.42 |
30 | 6.25 | 5.06 | 11.31 |
40 | 8.33 | 9 | 17.33 |
50 | 10.42 | 14.06 | 24.48 |
60 | 12.5 | 20.25 | 32.75 |
70 | 14.58 | 27.56 | 42.14 |
80 | 16.67 | 36 | 52.67 |
90 | 18.75 | 45.56 | 64.31 |
100 | 20.83 | 56.24 | 77.07 |
110 | 22.92 | 68.05 | 90.97 |
120 | 25 | 80.99 | 105.99 |
※ABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)が装備されていない自動車のケースです。ABSが装備されている自動車では、数字が異なる可能性があります。
日本の道路は、コンクリートではなくほとんどがアスファルトですので、アスファルト道路で、さらに乾燥している通常のケースを想定してみました。
自動車の時速が早くなるにつれて、空走距離、制動距離、停止距離が長くなっていることがわかります。
時速120キロでは、たとえ乾燥しているアスファルト道路と言えど、停止距離は100メートルを超えてしまいました。
アスファルトが湿っている道路
反応時間(秒):0.75 摩擦係数:0.5
自動車の時速(km/h) | 空走距離(m) | 制動距離(m) | 停止距離(m) |
10 | 2.08 | 0.79 | 2.87 |
20 | 4.17 | 3.15 | 7.32 |
30 | 6.25 | 7.09 | 13.34 |
40 | 8.33 | 12.6 | 20.93 |
50 | 10.42 | 19.69 | 30.11 |
60 | 12.5 | 28.35 | 40.85 |
70 | 14.58 | 38.58 | 53.16 |
80 | 16.67 | 50.39 | 67.06 |
90 | 18.75 | 63.78 | 82.53 |
100 | 20.83 | 78.74 | 99.57 |
110 | 22.92 | 95.28 | 118.2 |
120 | 25 | 113.39 | 138.39 |
※ABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)が装備されていない自動車のケースです。ABSが装備されている自動車では、数字が異なる可能性があります。
道路の状況が違っていても、空走距離は同じです。
ですが、制動距離は道路が湿っていることで、大きく異なってきます。
1メートルの差、1センチの差でも、事故になるか、ならないか、大事故になるか、ならないかは変わってきます。
ですが、道路状況が違うだけで、制動距離、停止距離がここまで違うので、雨が降っていたり、雪道、路面が凍っている状況では、いかにスピードを抑えて走ることが大事かがわかると思います。
例えば、時速40キロで走っていた場合、アスファルトが乾燥していれば停止距離は17.33メートルですが、湿っている場合では20.93メートルですので、その差は3.6メートルです。
ですが、時速20キロで走っていれば、アスファルトが乾燥している場合の停止距離は6.42メートルなのに対して、アスファルトが湿っている場合では7.32メートルと1メートル以内の差です。